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ラオスのインフラ事情、財政事情

ラオスのインフラ事情、財政事情

1.ラオスの公共投資
2.支払い状況
3.変化するラオス政府の投資政策
4.民間投資を呼び込む方法
5.チャンスか、リスクか

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1.ラオスの公共投資
 1)ラオス政府が実施をしている公共投資のひとつに道路整備がある。しかし、建設はともかく、道路は使用すれば補修が必要になるが資金不足で十分な整備ができていないのが現状。
 国土交通省の道路局計画課に取材すると、40%は国家予算であるが、残る60%は世銀,アジア開発銀行ADB、日本政府JICAなどの援助資金を当てにしている。
 自前の資金というか、民間投資を呼び込む方法としてBOT方式を検討している。その第1は、首都を通る国道13号線の、北部と南部、合計120kmを有料道路として、通行料を回収する方法を検討している。(世銀聞き取り)
 実際に6.・23、中部のサバナケットからセポン鉱山まで往復500kmを車で走ってみると、開通6年を経過して道路事情が悪い箇所が目立つ。道路の陥没地点を通ったショックで、補修用のタイヤがおちたほどであった。

 2)鉄道に関しては、中国がラオスから、タイをとおり、マレーシア、シンガポールまで敷設する案があって、2006年当時には大いに盛り上がった。
 現実かどうか不明だが、国内を通過する鉄道の駅周辺,20kmx20kmを租借して、中国の都市開発をできるようにラオス政府に要求をした、との話もあり、これにはラオス政府も賛成できず、計画そのものが棚上げになった、という話もある。
 中国よりの意見では、線路の補修幅1mだけを確保したい、という要求だという説明もあった(現地取材)

 3)空の交通では、国際空港4箇所、国内専用6箇所、合計10箇所の空港がある。主役はラオス航空。民間ではラオスセントラル航空がスタートしたらしいが、
まだ機材が足りず、運行実績もそれほどではない。

 4)河川交通もあるが、中国の雲南省からラオスビエンチャンまでで、運行する船舶も最大200トンクラスであり、雨季は水量があってよいが、乾季は水量が少なく、欠航もある。

 5)都市交通に関して取材すると、基本はバス。ビエンチャンには、電気自動車も導入されたらしいが、実際に走っているバスで、どれが電気バスか見分けられなかった。

 6)周辺国との国際交通では、先に紹介した空港とは別に、自動車、バスで自由に周辺国との行き来ができる。
 ビエンチャンから、ベトナムやタイにでる高速バスが毎日運行されていた。ちなみにハノイ,HCMまでは25ドル。

2.ラオス政府の公共投資の懐具合(支払い状況と税収)
 1)首都ビエンチャンを走ると、各役所の建物が改修、または新築されたものが多い。ところが、取材をすると建設会社が資金を回収するのに困っている。
最初に支払いの保証をするが、建設業者の資金で建物を建てると、後は3年据え置きの5年分割しはらいとなる。各省の予算から、このような固定的な支払いが発生すると、通常の事業ができない。このため、ラオス政府は徳政令をだしたらしい。今すぐ支払うと、3割カット。しかも、支払うのは国債での支払い。資金の余裕があれば、3年のちまで待って、それからの支払いとなる。
 2)銀行の借り入れ金利12-14%のラオスで、3割カットでも今支払ってもらうのが良い、という判断もでる。建設受注時にも相当な営業経費をかけた建設だが、支払いの際に3割カットされたことから、バブルで浮いた不動産、建設も落ち着いている。ちなみに、2012年の不動産取引に伴う税収は減少をしている。

 3)財政収入の大きな法人税は、ラオス企業が30%から24%に下がる一方、外国企業の特典であった10%が’24%に引き上げられた。
 このあたりも、政府税収の落ち込みがカバーできなかった理由である。





3.ラオス政府の変化する投資政策
 1)ラオス国立商工会議所の事務局長に取材すると、今後のラオス政府は変わりつつある。従来は、産業誘致に力点を置いてきたが、芳しい成果が上がらない。そのため、今後の重要政策は、第1がツーリズム。第2が、農産物の加工など\高付加価値化、第3は健康、医療サービスの拡大。第4には手工芸産業の振興、第5が、鉱産物開発である。

 2)今まで、産業振興として外国投資の誘致に力を入れてきたが、芳しい成果が上がらない。その理由に、電気代と安い労働力だけでは投資の誘致には力不足である。なによりも周辺国に囲まれたという立地上の制約がある。物流コストをカバーできるだけのビジネスモデルがない。工業団地の造成もしてきたが、いずれあがるとみると土地所有者が高い価格でしか、土地を手放さないため、高い地価の上に造成をするため、分譲価格があがる。これでは、タイの工業団地と比較しても魅力ある価格にはならないのである。
 3)これをカバーするために、交通網の整備を重点的にやってきたが、鉄道にもみるようにドナーにお任せの状況である。そこで、限られた立地、未開発地区はグリーンツーリズムの候補地と考えると、魅力がある。
 また、健康面の施策を充実させることによって、海外に流れる自国民の呼び戻し、海外からのリクリエーション需要の開拓がある。
 そこに農産物の加工品の販売や手工芸品の振興など加えることによって複合の効果が出る。

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4.民間投資を呼び込む方法
 1)税制の改正で、アセアン諸国の法人税引き下げに負けない程度の引き下げを進める。自国民は35%から24%になる。不足分は、直接税から,VATなど間接税の引き上げで、税収不足をカバーする。

 2)次に、土地法、労働法、会社法などの法整備の充実を行ってきた。
 透明性の確保である。
 3)誘致産業の見直しを行い、ツーリズム、農産物加工を重点にする。
 4)エネルギー、鉱山開発は有望であるが、鉱山開発は、許可を与えたものの実施されない案件が多く、数年間免許を付与しないと言う方針が決まった。残るのは、電力などのエネルギー開発である。
 これは引き続き、有望産業で、誘致にも力点がはいる。ただし、再生可能エネルギーを応援するといいながら、売電価格は水力と変わらない。

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5.チャンスか、リスクか
 ラオスの政府への信頼度を測るには、海外からの資金供与ができるかどうか、を見る視点がある。
 数年前まで、海外政府はラオス政府の財政状態から、無償援助は別に、融資事業は控えてきた。ところが、2010年にADBが財政状態の改善により、融資を再開したことにより、日本政府も融資を再開。
 現状は年間100億程度の供与であるが、いずれ財政事情が改善すれば、拡大する道はある。

 ただし、短期的に見ると、公共投資の分割払いに見るように、資金繰りが難しい面は否定できない。

 
 
by tmothailand | 2012-07-03 01:02 | ラオス